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Tom & Thomas トムとトーマス

イギリス・オランダ映画 (2002)

アーロン・ジョンソン(Aaron Johnson)が9才のトムとトマスの2役を演じるデビュー映画。アーロンは『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』『キック・アス』『アンナ・カレーニナ』などで20才前後のハンサムな姿を見ることができるが、ハンサムな男性の子供時代はやっぱりハンサムで、演技派の子供時代はやっぱり名子役だ。初主演にしてショーン・ビーン(Sean Bean)の影がかすんで見えるから凄い。1人2役といえば、アーロンより4年早生まれのリンジー・ローハン(Lindsay Lohan)の『ファミリー・ゲーム(The Parent Trap)』が有名だが、彼女の場合は、髪形など外観で演じ分けていた。トムとトマスは、外観は同じだが、施設生まれのトムがべらんめえ調のロンドン訛丸出し、トマスは普通のイギリス英語と、しゃべり方で分けている。だから、日本版のDVDのように同じ調子で訳してしまうと、2人の違いや、しゃべり方の違いによる面白さが伝わってこない。この辺りの雰囲気は、下のあらすじで味わって欲しい。

映画は、孤児院育ちのトムと、画家の養子になっているトマスは、双子同士。だから、時々お互いの存在を感じている。2人の日常、トムの脱走、トマスとの感激の出会い、トマスのアパートでの愉快な二重生活という明るくて楽しい前半部分。そして、孤児院の白人の子供達を動物の檻に入れて密出国させ、世界中の里親に売るという犯罪にトムと間違えられたトマスが巻き込まれ、それをトムが救うという緊迫した後半。好みとしては、前半だけを上手にまとめた方が映画としての質は良くなり、後半があるために安っぽくなってしまった感が否めない。だから、この映画は、純粋にアーロン・ジョンソンという天才子役に会うためのものだと割り切った方がいい。

アーロン・ジョンソンは、実に上手く、可愛らしく、素敵で、まさにプロだ。いろいろな表情を見せるが、どれも自然で、かつ、魅力的。ほれぼれと見とれてしまう。どちらも同じ役者なのだが、トムを演じる時の方が生き生きとして見栄えがする。子供の時可愛くても、すぐに顔が崩れるケースが99%だが、アーロンは子役としても傑出したハンサムだと思うし、『アンナ・カレーニナ』のヴロンスキー伯爵はハンサム中のハンサムだ。少し影のあるところが、奥行きを感じさせて良い。


あらすじ

映画は、カーディーン児童養護施設にいるトムが、夜、アポロ月面着陸の交信を口ずさみながら遊んでいるところから始まる。その時、孤児の1人が毛布に包まれて運び出される犯罪現場を目撃し、しかもそれが犯人にバレ、犬に追われて逃げる時に制帽を落としてしまう。翌朝の食事の際、雑用係のフィンチが「いい帽子だろ? 誰のだろうな?」と言うのをヒヤヒヤしながら聞いているトム。昨夜犯罪に一枚かんでいたのはフィンチだったし、制帽は1つしかない。結局、朝の集団体操の時、1人だけ制帽を被っていなかったので、フィンチに捕まってしまう。
  
  

フィンチの作業部屋に連れ込まれたトムは、「シャツをまくれ、スパイ野郎」「見たことを、全部吐くんだ」と言って、棒で背中を叩かれる。すると、不思議なことに、画家を父に持ち、小学校で社会科の授業中のトマスも背中に激しい痛みを感じる。呻き声をあげ、涙を流すトマス(上の写真が棒で叩かれるトムで、下の写真がトマス)。
  
  

フィンチが、校長に呼ばれていなくなり、戻ってきた時に隙をついて脱出するトム。トイレの窓の外の窓枠にブラ下がるが、足場がないので降りられない。そこにフィンチが入ってきたので、やむをえず手を離し4メートルほど落下、足をねんざする。この時、トマスは教室のドアの所にいて、いつも虐められるブルースが目の前を通った時、足に激痛が走る。思わず足を抱えるトマス。それを見た先生は、ブルースがやったと思い込み、「何をやった?」。「何もしてません、先生」。「君は、罰として居残りだ」。「でも、フットボールの試合が」。「出られんな」。当然、トマスはブルースの恨みをかう(上がトム、下がトマス)。
  
  

トムがフィンチに閉じ込められ時、窓に指で「助けて」と書いたのと同じことを、トマスもノートに書いていた。それを心配した先生は、トマスの父に、カウンセラーと相談するよう勧める。その晩訪ねてきたカウンセラーに、父は、トマスが養子だと話す。カウンセラーは、妻を亡くし、子育てと画家の両立は大変だとうと考え、トマスを寄宿学校に入れるよう勧めて帰る。トマスはそれを漏れ聞いて、父が寝室に入ってくるなり、「寄宿学校には行かない」「絶対イヤだ」言う。そして、「寄宿学校だと殴られる」「トムが、そうだから」とも。父は、「トムは、お前が頭の中で作った友達で、ほんとは いないんだ」と言い、さらに、「授業中も、空想ばかりしてるから成績も下がった」と。トマスは、「成績が上がれば、寄宿学校なしだよね?」「来週テストなんだ」「約束するよ。全部AかB」。実際は、トマスは地理が大の苦手なのだ。一方、脱出したトムは行く宛てもなく、雪の降る寒空で何とか夜を過ごし、翌朝空腹を抱え、鳩に餌をまいているおばさんを見つける。同じベンチに座り、「坊やも、あげて下さる?」とパンをもらう。もちろん、鳩にはやらず、むしゃぶり食べる(上がトマス、下はトム)。
  
  

施設の服のままではあまりに寒いので、子供服の店に入るトム。オレンジと白のコートをこっそりはおって、そのまま店を出ようとすると盗難ブザーが鳴る。慌てて逃げるトム。警備員が追ってくるが、高齢退職者の再雇用のためか、心臓に負担がかかり、ニトログリセリンを出そうとするが手が動かない。トムを呼び止めて薬を出してもらう(トムも足をねんざしているので早く走れない)。警備員は、トムのコートの襟についた警報タグを切り取ってやり、「女房の言う通りだ。俺には(警備員は)向いてない」と言う。「うん。ちゃうよナ」とトム。「さあ、行け。消えろ」。「ありがと。オレの、誕生日なんだ」。一方、トマスも父と一緒に商店街を歩いている。その時、店をやめたさっきの警備員がトマスとすれ違い、びっくりして振り返る。トマスは偶然同じ店に入り、父にねだって、同じオレンジと白のコートを買ってもらった(上がトム、下がトマスと警備員)。
  
  

トマスと父は、宇宙博物館へ。トマスは、トム同様、宇宙が大好きなのだ。父に電話がかかってきたので、1人で中に入っていく。しかし、トムは既にこっそり忍び込んでいた。月面着陸シミュレーターがメンテナンス中だったので、2人が入ったのは「鏡の部屋」。最初トマスは、正面に見える多数の鏡すべてに自分の姿が映っていると思った。でも、どこか変だ。そこで右手をあげてみる。全員同じコートを着ているのに、1人おきにしか手があがっていない。奥に入っていって、手を伸ばしてみると、鏡の像ではなく、人間の顔に手が触れた。びっくりする2人。そこで館内放送があり、トマスは父に呼ばれて出て行った(上の写真でコートの前を開けて黒い服が見えるのがトム。下の写真では左がトム、右がトマス)。
  
  

アパートに帰り、太極図の陰陽両儀の片割れの形をした自分のペンダントを見るトマス。「パパ、僕、これ付けてたんだよね?」と訊く。「そうだ。初めて見た時、ちっちゃな手首に巻き付けてあった」。「片割れは?」。「そんなの、知らないな」。しかし、形から、必ず片割れがあると思ったトマスは、もう一度さっきの子に会えないかと、雪の降る中を宇宙博物館に向かう。中では、トムが鏡の部屋で寝ていて警備員に捕まっていた。逃げ出したトムと合流するトマス。朝、テムズ川沿いの遊歩道で、嬉しそうに戯れる2人。「オレが、トムだ」。「すごいや。君が いるって分かってた。きのう落ちたよね?」。「ああ、逃げたトキ」。「ねぇ、僕たち…」。目の前をパトカーが通る。「しゃがめ!」。「君を、捜してるの?」。「見つかったら、施設に連れ戻されちまう。あんなトコ、死んでも戻らない」。「僕んちに、来ればいいんだ」。「マジかよ? どこに、住んでんだ?」。「おいでよ、見せてあげる」。アパートの前まで来て、アポロ月面着陸の交信を2人で交互に口ずさむ2人。まさに一心同体だ。2人は、トマスの父には内緒にすることにした(上の写真は左がトマス、右がトム。下の写真は左がトム、右がトマス)。
  
  

アパートでは、トマスの誕生会がサプライズで開かれた。偶然の成り行きで、トムの方が会に出てしまう。もちろん、見知った顔はゼロ。ケーキを出され、「食べていいのよ、ほら」と伯母に言われ、「ありがと、先生」。2度目に「先生」と言った時は、父に「悪ふざけか、トマス?」と言われ、3度目の時は祖母に「叩きますよ」。施設育ちのトムは、女性教師を呼ぶ時の “Miss”が身にしみついていたのだ(イギリスでは既婚・未婚に係わらず女性教師は“Miss”)。そこに、トマスの仇敵ブルースが登場。トマスは、トムが何を言うか心配なので、誕生日プレゼントにもらった宇宙服を着けて顔を出す。「あれ、見ろよ」とブルースが悪友連に言う。「宇宙飛行士 気取りかよ」。「宇宙服だぞ、文句あるんか?」とトム。「今日は、威勢がいいな? へルメットを取れ」。「お前のデカ頭が、入るかよ」とトム。当然ケンカが始まる、トムがブルースの腕をねじ上げる。施設育ちは強いのだ。そこに、新しく階下に入った美人機長が、最新の火星着陸のシミュレーション・ソフトをプレゼントに持って来てくれたので、2人は寝室に直行(上の写真はトム、宇宙服の中がトマス。下の写真は左がトマス、右がトム)。
  
  

明くる日、トマスは学校、トムはアパートでゲーム。そこに父が帰ってくる。「えらく早いな?」。キッチンに行くと、食べ物が散乱。「何だ、これは?」。「オレ、腹すいて…」。「腹が空いた?」。「うん、めちゃ、腹ペコで…」と施設のロンドン訛が出てしまう。ようやくトマスが帰宅。食事の時間となる。最初にトマスが食べ、途中で交替。てんこ盛りにするトマスに、「えらく 空腹なんだな?」。そして話はブルースとのケンカに。「友達と喧嘩はするし…」。「あの くそヤロー、誰だったっけ?」。「ブルースだろ? せっかく招いたのに」。「あんなクズ。鼻をへし折ってやる」。「口が悪いぞ」。「ごめんな、先生」。トマスがハラハラしながら聞いている。そして、「態度を改めないと…」。「ナンだっけ?」。「寄宿学校に入れる」。「ヤだよ! ナンでさ?」。「選択肢はない」。「寄宿学校なんか行かないぞ。死んだ方がマシだ」。「やめんか。こっちが死にたい」。「一度くらい反省してみろ。勉強も全くやってないし」。「勉強なら大じょーぶ。心配すんな。ちゃんとすっから」。「そうか? ヨーロッパの国の、首都も言えないのに?」。ところが父の予想に反して、“トマス”は、首都の名前をどんどんあげていく。それだけでなく、アメリカの州の名前も。「ちゃんと勉強してたのか?」と喜ぶ父。「うん、モチさ」。「変な話し方は、勉強のオマケか?」。これを聞いて、トマスは、試験の時トムと入れ替わろうと決心する。このシーンのトムの表情が最高に面白いので、幾つかピックアップする(1枚目はトマス、3-5枚目はトム)。
  
  
  
  
  

いよいよ試験開始。地理のテスト。「トイレに行っても、いいですか?」と手をあげるトマス。さっそくトイレで服を着替える。その時、トムの背中のひどい傷跡を見る。「一体、誰に?」。「フィンチ。木の棒で叩きやがった。そのすぐあと、脱走」。そして教室へ。次の算数のテスト。今度はトムが手を上げる。「トイレに行きたいんです」とトマスに言われたように丁寧に頼むが、「またか?」と言われ、「うん、チビりそうなんで」と地が出てしまう。テストの結果は全部AとB。トイレでタッチダウンをやった後、トムが戦い方を教えてやる。「僕にはムリ。体、小さいし」。「やろうと思えばやれる。今やっつけないと、ずっとやられるぞ」(上の写真は左がトム、右がトマス。下の写真は左がトマス、右がトム)。
  
  

自転車を校門を出たトマスは、先日、トムに内緒で施設を見に行った時、怪しい行動をとっていた男と鉢合わせする。自転車で逃げるトマス。クルーザーで追う男。トマスはショッピング・センターに自転車のまま逃げ込み、大騒ぎを起こして、警察に捕まってしまう。アパートの階段で座り、心配のあまり放心状態のトム(上がトマス、下はトム)。
  
  

トマスは、トムのいた施設に連れて行かれる。院長のバンクロフトは「戻って来たか、トム。すごく、心配したんだぞ」と心にもないことを。警官が、孤児じゃないと言ってると話すと、「子供は、よく嘘を」。警官が帰り、院長には何を言っても信じてもらえない。トマスが、泣きながら「お願い、ウチに帰して」と頼むと、そこにフィンチが入って来る。ドキリとするトマス。トムの背中を棒で叩いた男だ。そのフィンチに襟をつかまれるトマス。アパートではトムが心配そうに宙を見つめている(上がマス、下はトム)。
  
  

トマスは、途中でフィンチから逃げ出し、唯一開いていたドアから中に入るが、そこは院長の部屋だった。カウンセラーからの電話で、トムの持ち物について電話で応対する院長。それを机の下で聞いているトマス。トムが見つかった時の所持品の箱には、陰陽両儀の片割れの形のペンダントと、「トムへ、18歳になった時に」という手紙が入っていた。手紙を読み、暖炉の火に入れて出て行く院長。トマスは手紙とペンダントを回収し、置いてあった携帯も頂戴する(下の写真は2枚ともトマス)。
  
  

院長の部屋をでたところで再度フィンチに捕まったトマス。後ろ手に縛られ、怪しい部屋のマットレスに投げ出される。そして、「お前は、今から旅に出るんだ」と言いながら、注射器に薬を入れる。フィンチがトマスに注射した瞬間、アパートではトムが「やめろ!」と叫び、顔をしかめ「注射された」と言う。飛んできた父には、何が起きているのかさっぱり分からない(1・2枚目がトマス、3枚目がトム)。
  
  
  

強力な睡眠剤を打たれたトマスだが、携帯を何とかマットレスに落とすと、自宅に電話する。「パパ、僕だよ」「トムと間違えられて、地下室に監禁された」。しかし、必死の電話も、目の前にいるトムを、トマスだと思い込んでいる父には、イタズラ電話としか思えず、「誰か知らんが、タチの悪い冗談はやめろ」と切ってしまう。何を言っても通じないので、トムは、「この、分からず屋」と叫んでアパートを出ると、自転車で施設に向かう(上がトム、下はトマス)。
  
  

トムが施設に着いた時、トマスはクルーザーに運び込まれていた。隙を見て中に入り込むトム。トマスを起こそうとするが、全く反応がない。そのまま空港まで着いて行く。一方の父は、自転車を追って施設へ。院長に面談してもラチが明かず、自転車の放置してあった場所から施設に侵入、トマスが注射を打たれた地下室を発見、すぐに警察に電話する(上がトマス、下はトム)。
  
  

ヒースロー空港に着いたトマス入りの檻は、そのまま飛行機に積み込まれる。トムは、後を追い、車輪に登る。離陸寸前、車軸につかまり走り去る滑走路を見るトマス。車輪が格納されると、格納庫の隙間に体を横たえる。そして、自分がいることを伝えようと壁をドンドンと叩く。機長は、偶然、アパートの下の階の女性パイロットだったが、離陸準備中に窓から一瞬子供の姿を見たので、心配になって様子を見に行かせるが、その頃には零下24℃、空気の薄い格納庫の中でトムは気を失っていた(写真は2枚ともトム)。
  
  

それでも、気になる機長は、「すぐ、引き返しましょ」「リスクは、冒せない」とヒースローに戻ろうと決断する。「間違いだったら、クビですよ」と副操縦士。「車輪格納庫の死体より、いいわ」。緊急着陸して、機長自ら駆けつけると、車輪格納庫にトムが気を失っていた。救急隊員と救い出すが、気が付いたトムは、動くなという制止を振り切り、トマスを助けると言って機内に戻って行く(写真は2枚ともトム)。
  
  

ヤバいことになったので、誘拐男は、檻の中のトマスを「象でも死ぬ」ような強力な麻酔薬で殺そうとする。間一髪トムが飛びついて助けるが、逆にトムは男の人質にされてしまう。搭乗口で警官隊に囲まれながら、トムに麻酔銃を突きつけ「銃を おろせ!」と叫ぶ男。しかし、そこはトム。男の指を思い切り噛んで、下まで転がり落ちて逃げ出す。そして、力尽きて機体の下で倒れる(写真は2枚ともトム)。
  
  

一方、機長は檻の中にいたトマスを助け出す。トマスは、救急車に向かう途中で機体の下のトムに気付く。トムに近付き、「施設で、見つけたんだ」とペンダントを見せるトマス。「僕ら、双子だ」。2人の嬉しそうな顔(1・2枚目がトマス、3枚目がトム)。
  
  
  

事件後、かなり経ってから。ロンドンのテムズ河岸でのシーン。父が、①2人の母親が双子を病院の前に置き去りにした。②病院が気づく前に、別の女性がトムを連れ去った。③病院に残ったトマスをパパが引き取った、と話している。その時、機長がサイドカー付きのオートバイでやって来る。いつもカッコいい女性だ。この時、初めてトムは、意識せずに「パパ」と呼ぶ。そして、4人は仲良く宇宙博物館へと向かう(上の写真は右がトム、左がトマス。下の写真は右上がトム、その左下がトマス)。
  
  

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